近年、若者・子供のスキー離れが問題になっています。
更に新型コロナウィルスの蔓延が重なり、スキー人口の減少に拍車がかかっている状況です。

私自身は、両親の影響で幼いころからスキーをする機会があり年齢に合わせた楽しみ方をさせていただいたため、今でもスキーが大好きで毎年冬が楽しみで仕方ありません。スキーに関して周りに目を向ける機会は今までありませんでしたが、昨シーズンにスキースクールのお手伝いをさせていただいた際、スキーを楽しむ子供たちやスノーパークを見て今のスキー業界の実情に興味を持ちました。

そこで、私がスキーを好きになったきっかけを作ってくださった内の一人でもある、ハピスノ編集長竹川さんに近年のスキー事情及び新しい楽しみ方を伺いました。

スキー業界の最前線でご活躍されている方の視線からのご意見を伺い、スキー事情を分析し、現在の取り組みなども紹介できる記事にしてまいります。今後、スキーを楽しまれる際に参考になれば幸いです。

現在のスキー事情について

日本の余暇の動向を総合的に把握できる白書である「レジャー白書」によると、スキー・スノーボードの人口はピークの4分の1に減少しています。外国人観光客が日本の雪質を求め増加することで、スキー・スノーボード人口を下支えしておりましたが、新型コロナウィルスの水際対策により入国制限でそれも激減してしまいました。

そもそも、なぜ日本人のスキー人口が減りつつあるのか。それは、スキーを始めるきっかけが減っていることも原因の一つだと考えられます。スキーを始めるタイミングを大まかに分けると、「園児」「小学生・中学生(高校生)」「大学生」が多いと推察されます。それぞれの世代のきっかけ及び問題に着目すると、次のようになっています。

園 児

親御さんがスキー場に連れていく。スキーをしなくとも雪との触れ合いの機会ができる。幼稚園児向けのスキーパークやイベントなどを通して雪上の楽しみ方を味わえる。

そもそも園児からスキーを始める家庭が少ない傾向(コロナ関係なく、以前から少ない)。

理由としてはスキー道具をそろえると子供の成長に合わせないといけなくなりファミリーが動かなくなっている、また親世代がスキーをしない人が多くスノーボードに関しては事故の認識が強く危ない印象をもたれる。

小学生・中学生

学校で行くスキー学校でスキーをするきっかけができる。また、スクールなどに入ってスキーの技術が上達していく喜びが味わえる。

そもそもスキー学校を受け付けるところが減ってきてしまっている。

そして、コロナ禍でスキー学校にいけない世代ができてしまった。

大学生

「雪マジ!19」という19歳は対象のスキー場のみリフト券が無料、というサービスで、若者が金銭的にもスキーに行きやすい環境に。

昔:スキーができる人が1人でもいて、グループなどで連れていく

今:雪マジ!利用してスキー・スノーボードに行く人が全員初心者のケースが多く、特にスノーボードは楽しめずに辞めてしまう人が多発
→ 結果的に増加していない

そして、世代関係なく日本の景気が悪いことや、
スノーボードの上達がモチベーションにつながらないことなどが、
スキー・スノーボード人口の減少の要因として挙げられます

スキー業界の実際の取り組み

 上記のきっかけ及びそれについての問題点を踏まえると、
スキー業界としてアプローチすべきは下記が列挙されます。

  • 小さいうちから雪山にいくきっかけ
  • (小学校)、中学校、高校のスキー学校
  • 雪マジ!をどうするか(どう大学生にアプローチするか)

若い世代からスキーをするきっかけを作ることにより、
将来的にすべての世代へリーチが可能になることが予測されます。
現在、そのアプローチを狙ってなされている実際の取り組みをご紹介させていただきます。

園児及び小学生(キッズ)

ハピスノ:ファミリースキー&スノーボードの魅力訴求

"ハピスノ"より

スキーブームが終焉し、TVなどのマスメディアが取り上げる機会も減少。子供たちや保護者すらスノーリゾートの情報に接する機会が少なくなるなかで、啓発活動は必須と考え、下記のような対応を実施。

幼稚園・保育園などに配布するフリーペーパーを発行

初心者向けの無料のレッスン会を開催

県の補助金を使った格安のキッズツアーを実施

NORD:シーズンレンタルサービス

子供の成長が早く、スキー道具をそろえることが難点だったが、
シーズンごとにお得にレンタルをすることができます!
大人もレンタルができる上に、利用者のスキー経験によって
最適なスキー道具を借りることが可能

https://nord.tokyo/shop/ より引用
https://nord.tokyo/shop/ より引用

大学生・専門学生(18-22歳あたり)

リクルート:雪マジ!19・20

19歳はリフト券無料、20歳はリフト券半額。
200近いスキー場が賛同し、スキー場の負担で実施。
毎年、多くのスノーボーダー&スキーヤーが誕生(or復活)しています!
(私自身も昨年度に利用しました)

ホームページはこちら
https://majibu.jp/yukimaji19/pc/ より引用
ホームページはこちら
https://majibu.jp/yukimaji20/pc/ より引用

スマイルリゾート:雪マジ世代応援プロジェクト

https://www.smile-resort.com/ より引用

リクルートの雪マジの適用範囲をさらに拡大!
18・19歳無料、20~22歳半額
(舞子のみ18・19歳は平日無料・土日祝半額)

スマイルレッスン

初心者だけで遊びに来て、スクールも入らず…。
スノーボードはそんなに簡単なスポーツではないので、楽しめず、リピーターにつながらないことを憂い、60秒ほどのスノーボードハウツー動画を公開。舞子については、30分ほどの初心者対象無料レッスン会(スノーボード)を実施。

全世代

スキー場の進化

"スキーリゾート" から "スノーリゾート"へ

スキー場はスキー&スノーボードだけをするところではなくなっています。
スノーラフティングやスノーモービル、映えを意識した絶景テラスなど、雪上アクティビティの充実化が進んでいます。

1年通してスキー場の稼働化

グリーンシーズンの高原リゾート(=スキー場)も様々な取り組みをしています。コロナ禍でキャンプ場&グランピングは人気。それ以前から、ジップライン系やボブスレーなどなど、アクティビティを充実させることでファミリー層を中心に訴求しています。

雲海テラス(トマム)、sora terrace(竜王)、びわ湖テラス(びわ湖バレイ)といったテラスは夏とはいえ、スキーヤー&スノーボーダーでないユーザーがスキー場へ足を運ぶきっかけになっています。
収入のなかったグリーンシーズンを収益化することにより、スキー場のサービス・設備投資が可能になり、更なる進化が期待されます。

願い

ここまで、スキー業界の実情・問題とそれに対する取り組みについて紹介してまいりました。
最後に、日々スキー場を駆け回っており雪上の楽しさを誰よりもご存じの竹川さんから、スキーヤーへの願いを伺いました。

それは、まず、“自分自身がスキーをつづけていくこと”、そして“自分の子供や孫など周りの子供たちに雪の楽しさを教えていくこと”です。

私も冒頭で前述したように両親や雪上イベントの参加によりスキーの楽しさを学びました。取り組みの中にもありますが、スキーを経験しなくとも雪上の楽しみ方は様々です。スキーを楽しむことは勿論、スノーリゾートが楽しいと感じ、ウィンタースポーツを楽しんでくれる人が増えていければ、よりスキー人口も増加できると考えます。

ご協力

ハピスノ編集長

竹川紀人さん

埼玉県出身。20数年にわたり、スキー&スノーボード関連メディアに携わる。
なかでも、ファミリースキー&スノーボードの普及・啓発を目指し、ファミスキ応援委員会「ファミスキ.jp」を立ち上げたり、「ぴあ こどもと遊ぼう冬」のディレクションを担当するなど、各種メディアの企画立案も。「ハピスノ」は4年前に立ち上げ。これまでに取材したスキー場数は200を超え、ファミリー対象の雪上イベントも多数開催。

https://www.facebook.com/norihito.takegawa/
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